さよなら、Teacher
ヒロは再びキスを仕掛けてきた。しかも今度は、もっと深いキス。ヒロの手がブラウスの隙間から恵の体に触れた。
素肌にヒロの体温を感じて、恵は我にかえった。慌ててヒロの手を掴む。

「ごめん、ヒロくん。私、どうかしてる。いくら淋しいからって、ヒロくんと、なんて」

「ヒロ、って呼んでよ。オレも、メグって呼ぶから。

メグ、オレ、貴女がいなかったこの1週間、ずっと貴女のこと考えてた。こんなに1人の女のことを考えたのなんて、初めてかも。

メグは、純粋なんだ。オレのことも、丹下の家のことなんて抜きでマジで向かいあってくれて、いつも一生懸命で楽しそうで」

ヒロはそう言うと、コツンと恵の額に自分の額を当てた。

「ヒロくん…」
「ヒロって呼んで。
…ごめん。実はオレ、貴女がフラれて少しうれしいんだ。辛い貴女の心の隙間に滑り込むようなやり方は卑怯だと思う。
思うけど」

ヒロは恵の瞳を真っ直ぐに見つめた。


「オレ、マジだから」


今まで見たこともない『男』の顔をした、ヒロがそこにいた。
この刹那、この人に頼りたいと思えるような、大人な顔。

「ヒロ」
恵は、ヒロにもたれかかった。ヒロの広い胸に体を預け、瞳を閉じた…

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