さよなら、Teacher


「乙女の祈り。バダジェフスカ作曲。へたくそだな」


いきなり降ってきた声に恵は驚いて指を止め、振り返った。

鼻で笑いながら、ドアにもたれて笑っている。まるでアイドルのように整った顔立ちの青年…

「あ、あの。すみません。勝手に…」

「あぁ、いいよ、自由に弾いて。
それにしても、ここで待ってる間にピアノ弾いてる人ってのも珍しい。
新しい家庭教師?」


「はい。若月恵です。あなたが、丹下広宗さん?」
「そ。ヒロってよんで」


ヒロはそう言うと、恵をピアノの前から退くように指示し、自分がそこに座った。


彼の指がピアノに置かれた途端、美しい旋律が流れ出す。先程の恵と同じ曲。しかし比べ物にならない程上手い。


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