さよなら、Teacher
鏡がうつす現実に目を背け、恵はもう一度ベッドに倒れた。

恵の部屋は静かだった。
静かすぎて無性に誰かの声が聞きたくなる。


いや、誰かじゃない。聞きたい声はただ1人。ヒロの声が聞きたかった。


その時、恵の携帯がメール着信を知らせる。恵は慌てて床に放り投げたままのカバンから携帯を取り出した。


《メグ、大丈夫?
辛くて淋しかったらいつでも電話して。
オレがいること、忘れないで。 hiro》


そのメールを見たとたん、恵は居ても立っても居られず、グズグズと悩んでいたことも忘れヒロの携帯の番号を押した。

「メグ?」
すぐにヒロの声がする。その声に恵は、ひどくホッとした。

「メールをありがとう、ヒロくん」
「…〜くん、は要らないよ」
「実は、ヒロくんに聞きたいコトがあるの」
「だから〜くんは要らないって。
聞きたいコト?なに?」

恵は先程の鏡に映った自分の顔を思い浮かべた。

「私…私、少しでもキレイになりたいの。でも私、東京のよく知らなくて…腕のたつ美容師さんとか、オシャレな洋服売ってるところとか、教えてほしいの」
「なんだ、もちろん得意分野だよー」

恵はヒロの教えてくれる店をメモした。
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