さよなら、Teacher
恵は店の奥に連れて行かれる。そこには1人先客がいた。
長い脚を優雅に組み、ストライプのスーツをきっちりと着こなしている、大人で洗練された雰囲気のハンサムな男性。
「ジュン、その子が丹下の?」
「そうよ〜楽しみでしょ?」
「へぇ、アイツもやるなぁ」
その男性はスッと立ち上がって、恵に手を差し出した。
「一条拓人と申します。丹下広宗は、高校の後輩なんです。自分が三年の時、まぁ生意気な一年が入ってきたな、と思ったものです」
恵は差し出された手を恐る恐る握った。
「若月恵と申します」
自分がひどく場違いな気がして、それだけしか言えなかった。多分、この人もヒロ側の人。
だからこそ、ヒロに恥をかかせるような振る舞いはしてはいけない。そう思って気持ちを奮い立たせた。
一条拓人は、そんな恵の眼をのぞきこんだ。そして大きくうなづく。
「…多分、あなたならアイツを変えられる。
私の勘は当たるんです。
丹下に伝えて下さい。
共に最高の高みに登ろうと」
「最高の高み、ですか」
一条拓人の言葉がよくわからない。
「丹下には卒業してから会ってないのですが、あなたにお会いしてアイツの近況がわかりました。間違いなく、アイツは『アリオン』の鍵になる。
若月さん、アイツはね、最高の男になるよ」
「タクトは、ヒロがお気に入りだもんね〜
さ、メグミちゃん、変身の時間よぉ〜
タクトも、もういいわね?」
「あぁ。ジュン、若月さんにすごい魔法かけてやれよ、じゃあ」
一条拓人はなんとも爽やかに部屋を出て行った。