さよなら、Teacher
その言葉を聞いて、恵は足を止めた。

「メグ?」

ヒロが見ると、恵はひどく悲しそうな表情を浮かべている。

「そんなの、ダメ。
ヒロ、ダメだよ。ヒロが働いて稼いだお金じゃないんだから」

「…!」

ヒロにそんな事を言ったのは、恵が初めてだった。
親の金を使う事は日常のことで、当たり前の事。しかも、金はいくら使ってもいいものだった。


ー やっぱり、今までの女達とは違う。この人は、『丹下の息子』ではなく、『オレ』を見てくれる。
こんな女性は、初めてだ。


「自分で、稼ぐ…考えたことなかったな。
わかった。今度は、『自分で働いて稼いだお金』でメグにプレゼントするから。

今日は、オレの成績上がったから成果給、ボーナスという事で。メグの働きへの正当な報酬だよ。丹下から見たら、安いくらいの報酬だけど」

きっと、ヒロは分かってくれた。
桁違いのお金持ちだと、今日、痛いほどわかった。でもそのお金はヒロの親御さんが働いた結果であって、ヒロの稼いだお金ではないという事。

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