さよなら、Teacher
恵は、改めて大翔を見ていて、そして気づいた。
もう、彼のことを何とも思っていないことを。いや、もしかしたら最初から好きではなかったのかもしれないと思えるほどに心は冷めていた。


「惜しいことをしたわ。あなたと付き合っていた時間」
「何言ってるんだよ、恵。ふーん、イイぜ、今のお前ならもう一度付き合ってやっても」

ヒューヒューと大翔の友人達から冷やかしの声が上がる。
恵は、それを鼻で笑った。


「つまらない人ね、大翔。ホント、薄っぺらな男。
見た目なんて、お金さえかければいくらでも飾れるのに」


その時、恵はふと、ジュンの店で出会った一条拓人の言葉を思い出した。

『若月さん、アイツはね最高の男になるよ』


最高の男。そうね。もう、なってる。
私にとっては、すでに彼は最高の男。

「悪いけど、私、最高の男を見つけたの」


恵はバーの入り口をちらりと見た。壁に寄りかかって腕を組み、こちらをうかがうヒロの姿がある。
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