さよなら、Teacher
ヒロは店を出るなりお腹を抱えて大爆笑だ。

「メグ、見たろ?アイツの顔!今頃惜しいことをしたって後悔してるぜ」

「ヒロ…」

恵は今ひとつ浮かない顔のまま。

「なんだよ、メグ。あんなヤツに未練あるのか?」

恵は首を横に振ると力なく笑った。

「まさか。
スッキリしてる。

私、わかったの。大翔のことが好きなんじゃなかった。多分、『カレシがいる』ってことに固執してただけ。馬鹿だったなぁ。
ありがとうね、ヒロ。さ、ご飯食べよう」


「メグ」

歩き出す恵の手を掴んで制止すると、ヒロは恵の目を覗き込んだ。

「無理するなよ。元気がないのは、どうして?」

図星。隠せない。恵は、ふうっとため息をつくと、近くのベンチに腰掛けた。ヒロもその隣に座る。

「丹下の御曹司。住む世界が、違う。歳だって、私の方が五つも上で。
大翔の言う通りやっぱり釣り合わないって思って。

せっかく大翔のこと、整理ついて、私、自分の気持ちに素直になろうとしたけど。

ヒロ。

今ならまだ間に合う。私は単なる家庭教師で…」


「何言ってんだ、メグ。もう、とっくに手遅れ。オレ、メグに夢中だぜ。
メグは、オレを、丹下広宗だけを見てればいいの。丹下の家の事も、歳も、関係ない。
オレだけ見て。
『最高の男』なんだろ、オレ」
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