さよなら、Teacher

「メグ、大丈夫?」

ヒロが心配してそっと声をかけてくれる。
恵は何とかうなづいて、黙々と料理を口に運んだ。
食事の間は、誰も会話をしない。ただ食器の音だけがする、静かな食事だった。



“メグミ、さっきはごめんなさい。知り合いと間違えて。よく考えたら彼女、こんなに若くない”

食事が終わり、パラパラと会話が始まると、キャサリンが恵に話しかけてきた。

“いえ…そんなに似ているお知り合いなんですか?”
“えぇ、10年前の彼女にソックリ。
私はね、彼女に憧れてモデルになったのよ。日本人のエキゾチックさがまた、ステキで。初めてみたパリコレから彼女を追いかけて、色んなショーに行ったものよ”


恵は、キャサリンの話を聞きながら、体が震えてくるのを止める事が出来なかった。顔も次第に青ざめていく。
気づいたヒロが声をかけてくれたが、その声も遠く感じる。

「恵さん?どうなさったの?」
「若月さん?」

夫人と久典も恵の変化に気づいて声をかけてくれる。


“ワカツキ!!”

そこで急に、キャサリンがすっとんきょうな声を上げて立ち上がった。一同が驚いて彼女を見る。

“アユミの名前!!アユミ・ワカツキよ!”

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