さよなら、Teacher
10.心の澱
「ゴメンな、メグ、嫌な思いさせて」
恵が丹下家から帰るのを送りながらヒロが言った。
「ううん、平気。私こそゴメン。ヒロに姉のこと、言ってなかったものね」
恵は夜空を見上げる。久しぶりに暗い記憶の底から姉、歩(あゆみ)のことを思い出した。
「いいさ、メグが話したくないなら。
オレもさ、ヒデのこと、あんまり人に話したくないし」
「そう?紳士的で、いいお兄さんに見えたよ?」
恵がそう言うと、ヒロの体がピクリと一瞬硬直した。ヒロも兄の存在には何かあるらしい。
もしかして、似てる?