さよなら、Teacher
「ヒロ、いいの?戻らなくて」
「メグを泣かせてまで行く必要なんてない。
せっかく2人で過ごす初めてのイブだ。さっきの事は忘れて、思い知り楽しもう?」

「ありがとう、ヒロ。じゃ、まず着替えたい。ドレス借り物だし、ブティックに荷物も置いて来たから」
「オッケー、じゃ、ジュンの店からだな」



「あら〜ヒロ。いらっしゃーい。早かったのね、パーティは?」
「顔は出したよ。
今日は、イブだぜ。ヤボは言いっこなし」
「キャー、言うじゃな〜い。ラブラブねぇ」

恵が着替えている間、ヒロもジュンにラフな服を用意してもらう。

「ジュンさん、ドレスありがとうございました」
「あぁ、いいのよ〜試作品だし。
それより、ラブラブパワーでくっついてても、外は寒いわよ〜
マフラー用意するわ」

ジュンがヒロと恵の服装を見てスタッフに指示した。

「あ、ジュンさん大丈夫」
恵は、自分のトートバッグからラッピングを施した紙袋を取り出した。

「本当はジュンさんの素敵なマフラーがいいけれど、せっかく用意したから。
はい、ヒロ。メリークリスマス」
「え?…わ…これって…」
「キャー手編みじゃな〜い。よかったわね〜ヒロ!アタシのより、全然いいわ!」

紙袋から出てきた手編みのマフラー。ヒロはジュンと一緒に奇声をあげながら大喜びで首に巻く。

「ゴメンね、私あんまりお金なくて…
こんなもので、しかもプロのジュンさんの前で恥ずかしい…」
「何言ってるのよぉ。よく出来てるわ!
見てこのヒロの顔!イケメンに満面の笑み!!
写真に撮っておきたいくらい珍しいわ」
「だって、うれし過ぎる。手編みだぜ?メグが俺の為に編んでくれたんだ。今、毎日忙しいのに。
そっかぁ。心のこもったプレゼントってこんなに嬉しいもんなんだなぁ。金額じゃ、ないんだな。
ありがとう、メグ。ちょー嬉しいっ!」

ヒロはジュンの前だというのに、恵を抱き寄せ熱烈なキスを浴びせた。

「ハイハイ、ごちそーさま。さ、2人とも、サッサとデートしてらっしゃい」

ジュンはニヤニヤと2人の背を押した。

「ジュン、じゃ、待たな!」

イルミネーション煌めく街に、ヒロと恵は繰り出した。
手をつなぎ、肩を寄せ合い、寒さも忘れるほどに幸せだった。
ずっとこうして一緒にいたい。
ずっと一緒にいよう。
2人の思いは同じだった。
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