さよなら、Teacher
大学を卒業するまであと1ヶ月。
恵は、平日の昼間に丹下家を訪れた。
「恵さん、就職はどうなりましたの?」
客間で夫人と2人。
「…とりあえず、産休代行講師なので期間限定なのですが、決まりました」
「まぁ、よかった!おめでとう。
期限が来るまでに、また新しい勤め先見つければ良いものね。
それで、どちらの学校に?」
「…それが…」
恵の口から飛び出した学校の名前に、夫人は言葉を失い、肩を震わせた。
「その事、ヒロはもう知っているの?」
「いえ、まだ知らせていません。
ヒロくんの通う学校だと気づかなかった私が悪いのです。
でも、これがラストチャンス。断れば、卒業までに就職先を見つけるという両親との約束を破ることになり、実家に帰るしかありません。
実家に帰れば見合いして結婚しか道はない。
私は、教師になれません」
「そんな…」
「皆さまには本当に良くしていただいたのに、申し訳ございません」
恵は深々と頭を下げた。