転生令嬢は小食王子のお食事係
『昨日お(・)父(・)様(・)にお会いしに行ったら何かあればこちらで手を回すって言ってくれたわ』
『へぇ~旦(・)那(・)様(・)がそう言うなら安心だ』
『ええ、だからあなたも私の言ったことをちゃんとしてちょうだい』
『へいへい、お嬢様』
 どこかで聞いたことのある声だと思い記憶をたどると、すぐに答えが導きだされる。
 厨房にいきなりやってきた先日の失礼なメイドの声だ。この高圧的で甲高い声はそうそう聞き違えない。
 相手の男性の声ははじめて聞く。
 どこから聞こえてくるのかと周囲を見回すと、地階の窓がすぐそばにあった。どうやらそこにふたりはいるようだ。
 こちらからは姿が見えないが、なおも会話は続く。
『それにしてもそうなったら旦那様は派手に動かざるを得ないと思いますけど、いいんですかね?」
『さあ、知らないわ。私は言われたことをやるだけよ』
『第一王子派の足下もぐらぐら何ですから余計なことはしないでくださいね』
『うるさいわね! そんなこと私には関係ないわよ!』
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