転生令嬢は小食王子のお食事係
「少し冷めてしまいましたがよろしければお茶をどうぞ」
 私がそう言うとレオナール殿下は、毒気を抜かれたように『はぁ』と脱力して、敷布の開いているところに腰を下ろした。
「今日はカルツォーネとスコーンがありますよ」
「かる、つぉーね……?」
「カルツォーネというのは、ピザを……っていうとややこしいか。薄いパン生地の中に具材をつめて焼いたものです。こちらがトマトソースとたまねぎ、ベーコンのもので、隣が卵とベーコンとチーズのものです」
 カルツォーネは二種類作った。
 生地の閉じ方の模様で見分けがつくようになっている。
 トマト味のものは縁(ふち)を指でねじっていて、卵のほうはフォークを押しつけた凹凸がついている。
 レオナール殿下はよほど珍しく思ったのか、カルツォーネをじっと見つめる。
 食べたくないならば無理強いはしないが、興味がないわけではないようだ。
 万が一、毒が盛られていた場合のことを心配しているのかもしれないと思った。
 水面下で多くの人が動いているならば、そういうこともあり得るのかもしれないと頭をよぎる。
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