転生令嬢は小食王子のお食事係




 内心で首を傾げながら、レオナール殿下の空になったティーカップにおかわりを注ぎ入れる。
 それからレオナール殿下はカルツォーネをぺろりと平らげ、スコーンもひとつ食べてしまった。
「きみは母から私に食事をとらせるために派遣されたんだったけ?」
「そうです。……あの、そろそろきみというのはやめていただけると……。一度自己紹介しましたが、覚えていらっしゃらないかもしれませんが、私はアイリーン・フリートウッドです、レオナール殿下」
「アイリーン嬢だね。僕のことは殿下とつけなくてもいいよ」
「ではレオナール様、とお呼びしてもよろしいでしょうか」
「ああ。……そうだ、せっかくだしこれからも何か作ってくれると嬉しいな」
「それはいいですが……」
「厨房もお好きにどうぞ。では、日が暮れないうちに離れに戻るといいよ」
「あ……」
 レオナール様はすっと敷布から立ち上がるとあっという間にいなくなる。
 まさかの展開に私は唖然としながら、しばらくその場で固まっていた。
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