転生令嬢は小食王子のお食事係
　オニオングラタンスープというらしいが、奥深い味わいはこれまで食べたどんな料理とも違っていた。
　スープなのにパンが浮かんでいて、上にチーズがかかっている。
　その上、オーブンで焼くだと……！
　食材の組み合わせも調理法も普通はあり得ない。
　それをさも当然のように組み合わせ、新しい料理を作っているのだ。
　ただ、フリートウッド家の娘と考えたら、妙に腑に落ちるということもある。
　歴史の長い貴族家でありながら、政治には特出して関わらない一族。しかし、フリートウッド家は天才が多い。
　ただ、その才能を特別だとは考えず、さらに野心もないため飛び抜けた偉人が出てこないというのが実状だ。
　もったいないが、本人たちにその意思がないのであればとやかく言うつもりはない。
　アイリーン嬢の才能もそのフリートウッド家だからと思えば、納得できる。
　だからこそ王子宮にアイリーン嬢が滞在していることが表沙汰になっても、フリートウッド家の名前を出せば、婚約者だなんだという誤解もすぐ解消できるはずだ。
　裏で僕の婚約者だと匂わせるのはいいが、表に出すのはまずい。
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