転生令嬢は小食王子のお食事係
 かと思えば、それほど酒精は強くない。ドライフルーツの酸味とナッツの食感が噛むたびに味わいを変化させていった。
「うまい……」
 こぼれるように僕の口から言葉が出ていた。
「ひゃー、これはまた癖になる味ですね!」
 テオも驚いたように声を上げた。
 お菓子と言えば子供が好きなイメージだが、これはまさしく大人のお菓子といって差し支えないだろう。
 たっぷりのウィスキーが染みこんだ甘いケーキ。
 どこで学んだ知識なのか、はたまた独自で思いついたものか。
 はじめは煩わしさしかなかった令嬢の存在は、僕の中で大きくなりつつある。
 利用しているつもりが、さて……。
 自分では調整できない何かが勝手に動き出しそうな気がして、僕は残ったブランデーケーキをひと口で頬張ることで頭の隅に追いやった。

つづく












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