転生令嬢は小食王子のお食事係
そうして、今度は王妃宮だ。
行儀見習いと将来の結婚相手を探すため、王妃宮に上がったのはいいが実家で好きに料理をできていた私にはかなり窮屈な生活だった。
もちろん王妃宮の料理はおいしい。でも、それ以外にも食べたいものがある。
私は実家の時と同じように、厨房の下働きやメイドと徐々に仲良くなって、ちょっと料理をするくらいであれば厨房を使わせてもらえるように動いた。
料理人とは現金なもので、おいしい料理の話には飛びついてくれる。文字通りそれを餌に交渉を重ね、私は料理のアイデアと引き換えに厨房を使わせてもらえる権利をひと月前に勝ち取ったのだった。
「ほう、うまそうなもの食ってんじゃねえか」
「ひゃっ! りょ、料理長……!」
エマが口に頬張っていたタケノコの天ぷらを慌てて飲み込むと、後ろから聞こえてきた声に振り返った。
「ほう、今日はフライか?」
「いいえ、天ぷらという料理ですよ。衣がちょっと違うんです」
焦るエマを他所に私はにっこりと笑って答えた。
「へえ」
私の言葉に興味を惹かれたのか料理長がエマのお皿にまだ残っていた天ぷらをひょいと摘んで口に入れた。エマから惜しむような「ああー!」という声が聞こえたけれど料理長はしれっとした顔で咀嚼する。
「お、これはうまいな」
「タケノコが新鮮ですからね」
「このままでもいいが、ちょっとあっさりしてるな」
「天ぷらはお塩をちょっとふりかけて食べるととてもおいしいと思いますよ」
「そりゃあいい。どれ、ちょっと待ってろ」
行儀見習いと将来の結婚相手を探すため、王妃宮に上がったのはいいが実家で好きに料理をできていた私にはかなり窮屈な生活だった。
もちろん王妃宮の料理はおいしい。でも、それ以外にも食べたいものがある。
私は実家の時と同じように、厨房の下働きやメイドと徐々に仲良くなって、ちょっと料理をするくらいであれば厨房を使わせてもらえるように動いた。
料理人とは現金なもので、おいしい料理の話には飛びついてくれる。文字通りそれを餌に交渉を重ね、私は料理のアイデアと引き換えに厨房を使わせてもらえる権利をひと月前に勝ち取ったのだった。
「ほう、うまそうなもの食ってんじゃねえか」
「ひゃっ! りょ、料理長……!」
エマが口に頬張っていたタケノコの天ぷらを慌てて飲み込むと、後ろから聞こえてきた声に振り返った。
「ほう、今日はフライか?」
「いいえ、天ぷらという料理ですよ。衣がちょっと違うんです」
焦るエマを他所に私はにっこりと笑って答えた。
「へえ」
私の言葉に興味を惹かれたのか料理長がエマのお皿にまだ残っていた天ぷらをひょいと摘んで口に入れた。エマから惜しむような「ああー!」という声が聞こえたけれど料理長はしれっとした顔で咀嚼する。
「お、これはうまいな」
「タケノコが新鮮ですからね」
「このままでもいいが、ちょっとあっさりしてるな」
「天ぷらはお塩をちょっとふりかけて食べるととてもおいしいと思いますよ」
「そりゃあいい。どれ、ちょっと待ってろ」