転生令嬢は小食王子のお食事係
「ええ、昔から活発な子でしたから軍の空気が合っているようです」
 レオナール王子は王妃様のご子息で、この国の第二王子だ。
 私の三つ年上だったはずだ。
 両親に連れられて行った王宮の晩餐会で何度かお見かけしたことはあるが、直接の交流はなかった。
 王妃様によく似た金色の髪と碧の瞳だったはずだ。
 今でこそこうして王妃様の女官をしているものの、王族なんて雲の上の存在だと思っていたから、特に自分から王子に関わることはしてこなかった。
 王子様と結婚! なんて夢も特になかったし。
 たまに料理を作らせてくれる穏やかで優しい人と安定した結婚が私の夢なので。
 だから私はレオナール王子の話で盛り上がる女官たちの話を流すように聞いていた。
 まさかそんな私を見ながら王妃様が意味深に笑んでいたなんて知る由もなかった――。
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