転生令嬢は小食王子のお食事係
 貴族である私が厨房にいると仕事がやりにくいはずなのに、それを受け入れてくれたエマと料理長にはとても感謝している。
 身分はあっても 料理を通してとても仲良くなれた。
 おいしい料理を作ることもそうだが、ふたりとの交流も私が とても楽しかったのだ。
 それができなくなるのは寂しい。
 同じ王妃宮にいても、貴族と使用人の活動する場所は違う。同じ建物で生活していても合わずに過ごせてしまうのだ。
「でも、寂しいです……。アイリーン様の料理……」
「あら、名残惜しいのは私の料理だけなのですか?」
 しょんぼりとするエマに、私はクスクスと笑って言った。
「アイリーン様に会えなくなるのも寂しいです! メイドってだけで辛く当たってくる貴族の人もいるのに、アイリーン様はいつもお優しくて、お料理もいつも味見させてくれて……」
 茶化すように言ったのに、エマはそんな気持ちにはならなかったらしい。話ながら目をうるうるさせた。
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