転生令嬢は小食王子のお食事係
二、ご挨拶はフィナンシェと共に
「あー! お料理したーいー!」
 厨房に行くのを自粛したはいいが、そうしたらやることがなくなってしまった。
 それに、自分が食べたいものを食べられないというのは、なかなかにストレスが溜まる。
 実家の伯爵家でも、この王妃宮にきても楽しく料理できていたから、余計にその反動が大きい。
 それに、エマや料理長に会えないのも寂しい。
 王族や貴族が住む館は、使用人は厳密に使う場所が区切られているので、会わないと思わなければ会わないでいられる。
 なので私が厨房に行かなくなってからは一度も彼らと会えていないのだ。
「このまま会えないのは寂しいなぁ」
 いつか結婚して、私はこの王妃宮を出ていく。
 結婚しても女官を続けることはできるけど、現在の王妃様は私よりもずっと年上で、正直昔から務めている女官だけで事足りる。
 こうして私のような若い令嬢を女官として召し上げているのは、淑女教育と情報収集のため。
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