転生令嬢は小食王子のお食事係
 料理のためだけに貴族であることを捨てるのは愚かすぎる。前世で生きた現代日本ならともかく、この世界の文化水準の中で、私ひとりで生きていくなんて無理だろう。
 きっと火ひとつおこせないと思う。
 今、私がいる状況はとても恵まれているのだ。
 衣食住に困ることなく、なに不自由することなく育ち、王妃様付きの女官として働かせてもらっているのにこれ以上望むのは罰当たりだ。
 女官になった目的は淑女教育といい結婚相手を探すためだ。それは家のためでもあり、側仕えのマリオンのためで、そして私自身のためでもある。
 料理は好きだし、おいしいものを食べたいとは思うけど、そのために女官である今の立場をなくすわけにはいかない。
 ここはぐっと我慢して、いつか結婚した時、料理をしてもいいという旦那様である可能性にかける。
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