転生令嬢は小食王子のお食事係
「あの期待していただけるのはうれしいのですが、どうしてそこまで私を……?」
 正直、王宮に上がって数ヶ月の私ができることはそう多くない。もっとベテランの女官さんを派遣した方が問題解決できそうだと思う。
 私の問いに王妃様は、表情を和らげた。
「先ほども言いましたが、料理長からいろいろと話を聞いて、その上で、先日、あなたが作ったミルクレープや新しいオレンジのジャムを食べて考えたのです。もしかしたらあなたなら何か変えてくれるかもしれないと。まあ、あとは同年代のあなただからこそわかり合えることもあるかと思いましてね」
 どうやら私が作った料理を食べた上での判断のようだ。
 あの時は内緒で料理をしていることが王妃様にバレて、とにかくお叱りを受けないようにとばかり考えていた。だから、こうして厨房に行くのもやめた。
 しかし、王妃様はそんな私だからこそ王子宮に行ってほしいという。
 ただ、だからといって率先して王子宮に行きたいかと言われたら、現時点での私の気持ちはノーだ。
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