寂しがり屋の月兎
兎田は楽しそうに微笑していた。

顔を真っ赤にして肩を震わせる、小柄な少女を、可愛いなあと思いながら見つめていた。

本人は否定したものの、ノートのイラストを描いたのが彼女だということは、自明だった。

「すごいね」

「はっ?」

望は潤んだ黒目がちの瞳で、兎田を見つめた。

兎田は目を細めていた。

柔らかな笑みに目を奪われて、望は微動だにできなかった。

「そんな風に綺麗な絵を描けるなんてすごい。俺、君の絵好きだな」

頬が一瞬で熱を持った。湯気が出そうだ。

「ほ……ほんとですか……」

望が絵を描いたことがバレてる、しかも自分で認めてる、そんなことには頭が回らず、訊ね返してしまっていた。
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