寂しがり屋の月兎
兎田の誘いから一週間、花火大会当日である。

待ち合わせ場所に望が着くと、もう兎田が待っていた。

遠目にその姿を見て、うわあ、と望は思う。

もう辺りは薄暗く、光るものと言えば屋台の人工的な明かりくらいのはずなのに、兎田の周りだけやけにきらきらしている。

そのきらきらに誘われるように、ふらふらと何人かの女子が兎田に近寄っては離れ、また別の女子が、といったことを絶え間なく繰り返していた。

こんな表現は本来すべきではないのだろうが、常夜灯に群がる羽虫のようである。

いささか近寄りがたかったがそろそろと歩み寄る。

顔を上げた兎田が望に気づき、にっこりと微笑んだ。
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