寂しがり屋の月兎
望は目をぐるぐるさせていた。

どうすればいいのかわからない。

目を瞬くと、近くに秀麗な顔がある。

さっきから心臓が跳ねていて痛い。

「……い……行きましょうか」

望は手を退かなかった。

兎田がそれはそれは嬉しそうに笑ったので、また眩しくて望は目をぱちぱちさせる。

「デートだね」

「デ……っ」

赤くなる望の手を兎田はしっかりと繋ぎ直して、屋台の匂いがするほうへ、人波の中へと飛び込んでいった。
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