寂しがり屋の月兎
「もうすぐ始まるね」

兎田がささやいた。

その声に促されて望は黒い夜空を見る。

ちょうどそのタイミングで、幾筋かの光が線となって空を駆けていった。

夜空で光が弾け、大輪の花を咲かせる。

ぱあん、という乾いた音は少し遅れてやってきた。

人波がどよめき、歓声が上がる。

うわあ、という声は、予期せず望が漏らしたものだった。

吸い込まれるように黒い空を見つめ続ける。

いや、そこはもう黒いだけのものではなく、輝く光が色とりどりに存在を主張している。
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