寂しがり屋の月兎
昨日、あのあと、兎田は塾があるからと言って去っていった。

取り残された望は、ここ数分間の間に起きたことを整理するために、下校時刻になるまでベンチに座っていた。

恥ずかしさで悶えたり、“友だち”について自問自答したり、正気を保つために絵を描いたりしながら。

そうして導き出した結論は、『いつもと同じでいよう』だった。

彼がどういう思考であんなことを言い出したのか分からないし、こっちから会いにいくのも変だし、ノートのことをばらされる不安はあるけど、そんなことをしてもなんの利益にもならないし、うん、きっと大丈夫!

と、なんとか自分を奮い立たせて登校し、いつもと変わらず一日が過ぎたので、美少年の友だち発言はただの戯れ言だったのだと思い始めていた。
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