寂しがり屋の月兎
そして放課後、いつも通りベンチに座って、──多分兎田のおかげで思い浮かんだ漫画の続きを描いていた矢先に、本人が現れたのである。

「なんでって、いたらだめなの?」

心底驚いたかのように目を見開いて、悲しそうな声音でそんなことを言われたら、だめだとは言えない。

「いや、だめでは……ないけど……」

「そう? よかった!」

ほうとため息をついて安心したと言う彼には、全く裏があるようには感じられない。

「ねえ、隣に座ってもいい?」

「えっ……」

「だめ?」

なんでこの人はこんなお願いを断れないような喋り方をするんだ。

内心突っ込みつつ、口では言えない。
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