寂しがり屋の月兎
大ざっぱな話の筋や、結末の部分はそれなりにまとまっているのに、細かい話の展開が苦手なのだ。

望は唸りながら、前に屈んでいた背筋を伸ばすために大きく腕を上げる。

木の葉のすき間から青空を覗きながら、精一杯に伸びをする。

ざわざわと緑が揺れた。

一陣の風は望の髪と、そして膝の上のノートのページも繰った。

パラパラと風がめくったノートには、望の落書きがそこかしこに描かれている。

最後のページまで風は攫って、勢いは衰えず膝からノートを落とした。

ノートの重みが膝からなくなったことに望は気づいていたが、両手をベンチについて、体の重心を後ろに預けて、空を見上げ続けた。

ぼんやりとしている望は、柔らかな土に足音を吸収させながら近づいてくる男子に気づかない。
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