寂しがり屋の月兎
カッターシャツに身を包んだ彼は、呆けたような顔の少女に、首を傾げつつ歩み寄っていた。

無造作な茶髪の髪を風に弄ばせながら、彼は望の正面に立つ。

ここでようやく望も人の気配を察したのか、かくりと首を前に戻した。

立っているその男とパチリと目が合って、そして望は硬直した。

優しげな顔で、男子にしては肌の色が白い。唇は薄く、瞳は大きい。

触れたら指が埋まるだろう、ふわふわとした茶色の髪は、太陽の光が当たる部分は蜂蜜色にも見える。

白皙の美少年である。

唇を半開きにして、彼に見とれていた望は、美少年が望の足元に屈みこんで、ようやく我に返った。

「わ、わあ!」

なぜなら、そこには先ほど落ちた、望のノート……イラストがあちこちにばらまかれたノートがあるからだった。

反射的に右手を伸ばしたのだが、先に屈んでいた彼の方が一拍早く、ひょいと拾い上げてしまった。
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