寂しがり屋の月兎
完璧に巻き込まれた形の三日月に迷惑をかけるわけにはいかない。

しかし三日月は、目を細めて手を振った。

「気にしなくていい。で、どう? 有明さん」

「……いいわよ。その男がいやそうだし」

それを受けて兎田が眉をぴくりと動かす。

そして口角を上げる。

「いいよ。誰が一緒でも、望ちゃんとのデートに変わりはないし」

「二人の合意がないとデートとは言わないのよ」

気圧の下がった有明の声である。

両者の間だけ真冬のような冷たさだ。

木枯らしが吹き抜けていく幻聴が聞こえた。
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