寂しがり屋の月兎
「その絵……」

「いやなんでもないですやめてください」

話が絵のことに及ぶと、パニックになった頭は指令を出せずに、望の口が勝手に喋った。

「……その絵……」

「やめてくださいってばっ」

もはや半泣きだ。一生の恥だ。この美少年の記憶を消す薬はないものか。

「……その絵、君が描いたの?」

「違いますよっこれのことは忘れてくださいっお願いです!」

自分がなにを言っているのかよく分からない。

薄いノートを胸に抱え込んで、望は蹲る。

とても彼の顔を見れなかった。
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