ヒロインvs悪役
スカートのポケットの中の携帯が震える。

ああ、そっか。

ここ学校だっけ。

無意識にポケットから携帯を取り出し電話に出る。



「…もしもし」

「もしもし翼?今どこ?もうすぐ授業始まるよ?」

「沙羅…、私ちょっとお腹痛くて。保健室で1時間寝るね。悪いけど先生に言っておいて」


「お腹?本当に?……なんか翼、声震えてない?
…もしかして何かあったの?」



「…何もないよ。じゃあよろしくね」





これ以上耐えきれなくて、沙羅には悪いけど電話を切った。

ダメだな、こんなことで弱るなんて。


でも1時間経ったら、いつもの私に戻ろう。
涙を流すのは一人の時だけ。
男っぽい私が泣いてもどうにもならないんだから。
泣くのは可愛い子だけで十分だ。




保健室には行きたくないな。

…屋上にでも行こうかな。


いくつもの階段を上り屋上への扉を開ける。

太陽が地面をジリジリと照らしている中を歩いて
フェンスによりかさり空を見上げる。






蘇る、さっきの出来事。


頑張るって言ったのにな。
可愛くなるって宣言したのにな。




沙羅には謝ろう。

メイクは、もういいって。





「…っ、」

思い出したら悔しくて、なさけなくて、止まっていたはずの涙がまた溢れ出す。

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