ヒロインvs悪役
拭いても拭いても、次から次へと溢れていく涙。

学校で泣いたことなんかなかったのに。


いくら辛いことがあっても、悲しいことがあっても、泣くのは家で一人の時に。
そう決めていたのに。



……でも、今は一人だし。いいよね。









「ーーー…翼」








あれ、なんか紘の声が聞こえたような。

私ってば幻聴まで聞こえるようになっちゃった?






「翼」






待って、…これ幻聴なんかじゃない。

確実に紘の声だ。

後ろに、、いる?

ヤバい、何でいるのかはわからないけど泣いてるところを見られるのはまずい。

慌てて涙を拭く。








「…翼、こっち向け」







だめだ。今紘の方を向いたら泣いているのがばれる。
それだけはだめだ。

とまれ、とまれ、なみだ



「ーー何?紘。私今空見てんの」





「翼」





「…だから、今そっち向けないから。
ていうか授業は?早く戻りなよ。
私もすぐ戻るからさ」






お願い、早くここからいなくなって。

早く、早く…


「翼」











「だから、「翼…!」








大きな声とともに腕を引っ張られ、そのあまりにも強い力に逆らえず紘の方を向いてしまった。
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