ヒロインvs悪役
「…やっぱり泣いてる」
そう言う紘の表情は、少し悲しげで。
やだ、やだ、、紘に泣いてるとこ見られた、
「ち、違う…!泣いてなんかない!」
「じゃあ、これ何?」
私が拭ききれなかった涙を、紘が指ですくい取る。
「ちが、、これは…」
「大丈夫。翼が強いことは知ってる。
でも、弱いことも知ってる」
私に近づき、頭の上にそっと手を乗せる紘。
そのまま、私の短い髪を撫でるように手を動かして言う。
「…俺の前でくらい、気緩めていいんじゃねぇの」
その言葉とあまりにも優しい紘の目が苦しくて、でも…暖かくて
「うるさい…」
堪えていたのに、また涙が止まらなくなった。
「俺の胸でよかったら貸しますけど?」
「い、らないし…!」
ボロボロ泣きながら紘のむねを押す私を見て、
「ん、それでこそ翼だな」
そう笑う紘。
「じゃあ、今だけ。な?」
そう言って、いきなりギュッと私を抱きしめてくる紘。
恥ずかしくて慌てて突き返そうとしたけど、
でも紘の体温が心地よくて、突き返すことなんて出来なかった。