ヒロインvs悪役
「…あとで殴る」
こんな状況でも私から出るのは、いつものような可愛げのない言葉で
「ははっ、それは怖い怖い」
また、それをいつものように受け流す紘。
ーー…あぁ、どうしようもないくらいに好きだ。
「…話せるなら聞くけど、話せないなら無理には聞かない。どうする?」
私が落ち着気を取り戻したのを見計らってか、紘がゆっくりとした口調で声をかけてきた。
私はその問いにゆっくりと首を横に振った。
私を見た紘は優しく微笑んでうなづいた。
そして急に太陽に照らされる地面に寝転がって
「…そっか。わかった。じゃあ寝るか~」
目を瞑ってしまった。
私も紘の横に寝転がって、空を見た。
いつもより空が近く感じる。
いつもより大きく、広く感じる。
…いつもより暖かく感じる。
「紘、ありがとね」
自分にしか聞こえないくらいの小さな声だった。
でも、微かに紘は口角を上げたような、そんな気がした。