ヒロインvs悪役
あまり深く考えてこなかったけど、紘には好きな人がいるのだろうか。
そういう話は照れ臭くてお互いしてこなかったけれど、どうなのだろう。
…知りたいけど、知りたくない。
矛盾した思いがぐるぐると私の中に渦巻いていく。
「つーばーさー。アイス食いてー」
放課後、いつもは一緒に帰らないけど紘の唐突な発言から一緒にアイスを食べに行くことになった。
紘曰く、アイスは男同士で食べるもんじゃねえ。らしい。
「何にするか決まったか?」
「……」
「おーい。翼ちゃん聞いてますかー?」
耳元にかかる息
「うわっ、!え、あ、何?」
「アイス、決まったか?」
私の顔を覗き込んでくる紘からパッと顔をそらし、イチゴのアイスを指差す。
「これにする」
「ん。アイス買っとくから翼は席取っといて」
「わかった」
…さっき、顔近かった。
こっちは心臓破裂寸前なのに紘は平然としてて。
そんなの当たり前だけど、いつものことだけど、でもやっぱり少しは意識してほしい。