ヒロインvs悪役
だって、だって…
龍の隣を歩く女の子がいたから…っ
あれは黒髪のショートで、背が高くて美人と有名な佐田さんだ。
…また、佐田さんだ。
佐田さんと龍は幼馴染で、私はあの二人がよく一緒に帰るのを見かける。
後ろから見る龍は、どんな表情をしているのかは分からない。
でも時折横を向いて龍を見る佐田さんの表情はとても笑顔で楽しそう。
…ずるいよ
幼馴染だからって、あんなに龍のことを独り占めして。
私だって龍と帰りたいし話したいよ…
溢れ出る涙と共に、嫉妬心もじわじわと溢れ出てくる。
私より断然、龍といる時間が長い佐田さん。
佐田さんと話したことはないけれど、いい噂は聞かない。
冷酷で優しさがない、話しかけても無視される。
確かそうナナが言っていたような気がする。
そんな佐田さんが唯一、自分から話しかけて笑いかけるのが龍で。
だから佐田さんはいつも龍を独り占めして。
だから私が龍と居られる時間はとても少ない。
私の龍を取らないでよ…。
でも結局私は二人の間に飛び込んでいく勇気はなくて、一人で帰った。