ヒロインvs悪役
私、彼に言わなくちゃいけないことがある。


私が自分の気持ちを言えたのは、


「あ、あの」

「なに?」

「…ありがとう…!」



彼のおかげだから。



「…、なに、いきなり」



「貴方の言葉に勇気をもらったから、だから、お礼言わなくちゃと思って。本当にありがとう」





私がそう言うと、彼は頭をくしゃくしゃとさせて少し照れくさそうに



「…春」



「え?」



「俺の名前。…今の君になら教えてもいいと思った」




はる、くん。
春くん。

一見冷たそうだけど、春の日差しみたいに暖かい彼にぴったりな名前だと、そう思った。


「それとお礼を言うなら全てが終わった時に言って。
君にはまだやることがあるでしょ」



そうだ。

私はまだやるべきことがある。





「…姫」

「全てが終わったら、私のこと姫って。名前で呼んでね…っ」


もうすでに歩き出してしまった春君の背中に向かって叫ぶ。



「…あっそ」




春君はそれだけ言って行ってしまった。




よし、頑張ろう。
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