隣の白咲くん。

「…で?」

「それで、あの、あと一歩のところで焼きそばパンが売切れてしまいまして…」

「ふーん…」



走って、走って、運動音痴の私なりに猛ダッシュで教室に戻ってきました。

私が恐る恐る自白すれば、隣に座る白咲くんの顔には青筋が立ち始めます。

具が焼きそばからコロッケに変わったことに、酷くご立腹しているようです。



「今日は焼きそばの口だったのに、どうしてくれるわけ?」

「す、すみませ…」

「この愚図、ノロマ、役立たず」

「ううっ」



怒り心頭の様子でコーヒー牛乳のパックにストローを刺した白咲くんは一気にズゴーーーッと飲み干しました。相当イラついているのが見て取れます。



「白咲くぅん、一緒にランチしよー」

「いいよ」


不思議なことに、白咲くんが毒を吐くのは何故か私に対してだけです。他の人の前では別人のように優しくなります。それこそ、優しい白咲くんは本当に真っ白なお花みたい。



「おい、黒美」

「は、はい…」

「今日、待ってるから来いよ」

「……」

「返事」

「は、はいっ!」



真っ白なお花とは程遠い、鋭い目つきを向けられると拒否することは不可能でした。

実は…白咲くんに振り回されるのは、学校内だけではないのです。
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