キミの運命の人は俺じゃない
「すみません、私はK大学病院の歯科医です。傷の手当てをしたいので後程こちらと警察に連絡いたします」

切られた左手に着ていたカーディガンをとりあえず巻つける。
傷が焼けるように痛い。

鞄から携帯をとりだし病院に電話をかける。
「はい、K大学病院口腔外科滝川です」

「長田です。おはようございます。」

「長田先生?おはようございます。どうされました?」

「ごめんなさい。怪我をしてしまって手当てをしたいの。外科に電話を回してほしいんだけど」

「えっ!?大丈夫なんですか?今まわしますね!」

痛む手を押さえ早足で病院へむかう。
押さえた服から血がにじみだしてきた。

数回のコールのあと
「はい、外科の井上です。」
忙しいのだろう。ざわつく声が耳にはいる。
「おはようございます。口腔外科医の長田です。晒名先生はいらっしゃいますか?」

「 えっと…あぁいらっしゃいます。先生、晒名先生外線1番に御電話です。」

虎太朗を呼ぶ声が私にもはっきり聞こえて苦笑したが、虎太朗がいてくれたことに胸を撫で下ろす。

「はい、御電話かわりました。晒名です」

「虎太朗、良かった居てくれて。」

「亜沙美!?」

私は虎太朗に傷の手当てを頼み込み、虎太朗は救急外来に来るように私に指示をした。

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