キミの運命の人は俺じゃない
「とりあえず、こっちが先だ」

あの大きな手が私の腕に触れる。
チクリと腕に針が刺さった。

「なるべく跡が残らないように縫うが、長田先生、一人暮らしか?」

゙長田先生"
よそよそしい呼び方にあぁ、やっぱり噂どおりなんだと目を伏せる。

一度だけでかまわない、そう望んだはずなのになぜだか寂しさを感じた。
「先生?長田先生、聞いてたか?」

「 えっ?」

「大丈夫か?
麻酔そろそろ効いてきたろう。
消毒して、なるべくあとを残さないようにきれいに縫ってやる。 で、さっきから傷を見ないが医者だろ?メス握って切ったり縫ったりしてんだろ?」

「 ダメなの!こういうのはダメなの…
口内は大丈夫なんだけど」

「 へー、可愛いとこもあるんだな」

顔をあげるとじっと見つめる彼の視線にぶつかった。



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