今宵、貴女の指にキスをする。
「木佐先生の手は、とてもキレイだ」
「ちょ、ちょっと……相宮さん」
「私好みの手です。ずっと触れていたくなる」
「っ!」
慌てふためく円香の手をギュッと握りしめたあと、名残惜しそうに相宮は手を離した。
すぐになくなってしまった相宮のぬくもりに、円香は寂しさを覚える。
そんなことをまさか本人に言う訳にもいかず、ただただ名残惜しい気持ちを押し殺し円香は手を引っ込めた。
有名ブックデザイナーである相宮佑輔は、無類の指フェチだと思う。
本人は自分で立候補して円香の作品を手がけていると言っているが、ただただ円香の手が好きだから、触れたいからという理由からだろう。
そうでなければ、相宮ほどの人気ブックデザイナーが毎回毎回円香の作品を手がけることはないはずである。
だからこそ、『色仕掛けで相宮を束縛している』と言われても仕方がない現状なのだ。