今宵、貴女の指にキスをする。

「ったく。木佐ちゃんは本当にお人好しだな」
「そ、そうでしょうか?」
「そういうところが作風にも出ているんだろうな。木佐ちゃんの作品は読み終えたあとにホッと息抜きができる優しさに包まれているから」

 編集者として一目置かれている堂上からそう言ってもらえて正直嬉しかった。
 お礼を口にしようとしたのだが、頭上から低い声が聞こえて言葉を呑み込む。

 ハッとして顔を上げると、そこには相宮が厳しい表情を浮かべて堂上の肩を掴んでいた。

「相宮さん!」

 円香が相宮の名前を呼ぶと、彼は少しホッとしたように表情を緩めた。
 だが、堂上の顔を見て再び厳しい表情へと変わった。

「一体、これはどういうことですか? 堂上さん」

 相宮を見た堂上は一瞬驚いた素振りを見せたが、何かに勘づいたらしく小さく息を吐き出す。
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