今宵、貴女の指にキスをする。

「相宮さんこそ、どうして……? ああ、そういえば実家が京都だって言っていましたね。こちらに帰省されていたんですか」
「ええ」

 相宮が小さく頷くと、堂上は片眉をクイッと上げる。

「七原にでも泣きつかれましたか?」
「その通りです。仕事のことで連絡をいただいたときに、木佐先生のことを聞きました。上司である堂上さんが暴走していたらマズイ。もし良かったら魔の手から救いだしていただけませんか、と頼まれました」
「魔の手ですか」

 苦笑する堂上に、相宮は小さく頷いた。

「そうです。ただ……どうやら今回は堂上さんが魔の手ではなかったということですね。今の話を聞く限りでは」
「盗み聞きですか。趣味が悪いなぁ」

 相宮の言葉を聞いた堂上は、心底悔しがるように顔を歪める。
 その表情も普段の堂上からは見ることができないものだ。

 円香は驚いて目を見開いていると、相宮は冷たい眼差しを堂上に向けた。
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