今宵、貴女の指にキスをする。

「しかし、今回のことも苦言したいところですが、貴方のやり方は強引すぎましたね」
「……」

 堂上は顔を引きつらせる。その様子を見て、円香は訝しげに堂上を見つめた。

「まさか、貴方の権限で木佐先生との仕事を阻止されるとは思ってもいなかった。堂上さんが主犯だとわかるまで、かなり苦労しましたよ」

 この前、急に取りやめになった仕事のことを言っているのだろうか。

 あれは、相宮が円香に愛想を尽かし、二度と仕事をしたくないと思って断ってきたのだと思っていた。
 それはどうやら円香の早とちりで、真実は違っていたということなのだろうか。

 円香は何度も瞬きをしながら、相宮を見上げた。

「それに私の仕事が忙しくなるように、色々と手を回しましたね?」
「それはどうでしょう?」
「酷いですね。おかげで木佐先生に会いに行くこともできなかった。それを見越して貴方は私に無理難題を押しつけてきたのでしょうけど」

 ホッと胸を撫で下ろした円香だったが、次の相宮の言葉に鼓動が激しくなる。
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