今宵、貴女の指にキスをする。

 それに、新作装丁のデザイナー変更については、どうやら堂上が一枚噛んでいたようだ。だからこそ、相宮はあんな嘘を堂上についたのだろう。

 堂上がこれ以上円香の周りをうろつかないように。円香の不利益になるような事態を招かないように。
 相宮が嘘をついたこともわかっている。
 だけど、円香としては嬉しくて仕方がなかったことは確かだ。

 円香は未だに自分の手を握りしめている相宮を盗み見る。
 相変わらずキレイな顔立ちをしている。ずっと見ていたいと思うほど、相宮の容姿には魅せられてしまう。

 乗車券を買い終え、相宮に手を繋がれたままで新幹線ホームまでやってきた。
 二人がホームに着いてすぐ、最終列車が滑り込んでくる。
 相宮に導かれるように、円香も新幹線に乗り込んだ。

 座席に座ったあとも、未だに相宮は円香の手を握りしめている。
 さすがは指フェチだ、そんなことを思っていると、相宮が円香をジッと見つめていることに気が付いた。

 小首を傾げている円香を見て、相宮はなぜかためらいがちに息をつく。
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