今宵、貴女の指にキスをする。
「調べがついて主犯は堂上さんだとわかりましたから、木佐先生が断ったのではないことは理解しています。ただ……七原さんに聞いたら木佐先生は今回のデザイナー変更について問い合わせは一度もしてこないと」
「っ!」
言葉をなくす円香は、ギュッと手に力を入れる。
すると必然的に相宮の手を握りしめることになってしまう。
そこで再び相宮と手を繋いだままだったと気が付いて慌てた。
だが、相宮は円香の手を離すつもりはないようだ。
ギュッとキツく、そして離れることは許さないとばかりに握りしめてくる。
より相宮の体温を感じ、いたたまれなくなってしまう。
「貴女にとって、私という男はどんな存在なんでしょうか」
「どんなって……」
唖然として円香が呟くと、相宮はスッと視線を逸らした。
トンネルに入ったため、ガラスに映るのは真っ黒な世界だ。
そこを見つめたまま、相宮は小さく何かを呟いた。