今宵、貴女の指にキスをする。

 だけど、隣りに座る相宮からは話しかけないでくれという雰囲気を醸し出している。
 そして、彼の態度はそのまま続き、円香のマンションに着くと「では」と素っ気ない言葉だけを発して相宮はタクシーに乗り込んでしまった。

 相宮が乗ったタクシーが見えなくなるまで、円香はずっと見つめ続ける。
 左手に残る、相宮の熱を感じながら……


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