今宵、貴女の指にキスをする。
「明日、私は相宮さんとこちらの事務所に伺う予定です。止まってしまっている装丁デザインのことについて煮詰めていかなければならないですから」
「あ、相宮さんがお見えになるんですか!?」
声が上ずってしまう。
慌てふためく円香に、七原はプッと噴き出した。
「先ほど言いましたよね? 装丁は相宮さんが再びすることになったと。まだ話し合いの途中でしたもの。相宮さんが来るのは当然ですよね~」
「う……」
その通りだ。だが、傍目に見ても慌てふためいているであろう円香に七原は意地悪に笑う。
「いいじゃないですか。好きな人と再びタッグを組めるんですよ~」
「そ、そうかもしれないですけど」
「ここは一つ、仕事も恋もどちらも手に入れちゃいましょうよ!」
「ひ、ひ、人ごとですよね? 七原さん」